恥を忘れない。

雨が降りそうな雲行きで、杖代わりに少し長めの傘を持って出かけた。
忘れ物はないかと、頭がよぎる。
不便な場所にある病院に向かってはいるが、
胃のあたりが、キリキリと痛んでくる。
治る希望ない人のお見舞いは、こちらまで辛くなる。
歳を重ねるたびに、周りも自分自身にも、あまり良い話も聞かなくなる。
60代の友人が、
「意識して、身なりを清潔にしとかないと、
汚らしく見えますわ」
と、呟いていた。
確かにそう思う。
着ているものが古かったり、持ち物が汚れていたりすると、ますます不潔に見えてくる年代である。
若返りのために、過剰にお金をかけようとは思わないが、せめて身づくろい位、清潔に保っておきたいとは思う。
若い人達のダメージジーンズ、くしゃくしゃの麻の白いシャツ、軽快なスニーカー、どれをとっても、今更似合うわけはない。
だからと言って、ロングヘヤーにピンクのドレスも、かえって可笑しい。
若い頃には、目にも止めなかった高齢者の姿に、あっという間に自分が入れ替わったことを、
認識している。
精神が未熟なため、肉体の老化に追いつかず、
時々、不可解な行動、行為、言動に我ながら飽きれる時がある。
「認知度が、低下してますよ」
と、宣言されたら受け止められず、慌てふためくだろう。
こんなことは恥ずかしいと思う気持ちを大切にして行きたい。
心も身なりも、小ざっぱりとして暮らしていければ、幸せである。