お客様は高齢者

お昼時のロイヤルホスト
私の向かいの席に、派手なチェックのジャケットにゴルフ帽、指には大きな金の指輪。
目を引いたのは、格好でなく、横に置かれた歩行器である。
仕事柄、福祉用具には目がいく。
そして、介護度が浮かんでしまう。
「ちょっとー!おねえさん!」
機嫌よく、大きな声で、ウエートレスさんを呼び、いろいろ注文。
結構な量をぺろりと平らげて、おもむろに、若いウエートレスさんを呼び止め、何やら話をしていたが、だんだん声が大きくなり、怒り出したのである。
「クレーマー老人か?」
と、嫌でも聞こえてくる席に座ったことを後悔した。
プロの感が働き、最初から、行為行動が、
「ヤバイかも!」は大当たり。
内容は、ロイヤルホストの意味を申せとの話。
自分達高齢者からすれば、ホストといえば、
「ホストクラブ」と勘違いしてしまうので、その訳を聞かせよ!との話。
思わず吹き出しそうにはなったが、若いウエートレスさんは困り果て、額に汗して気の毒である。
「大学まで出て、なんでわからんのやー!」
と、追い散らす。
「知らんがな!ただのバイトやのに。」
ほっときゃいいのに、入れ替わりニコニコ顔のベテラン風ウエートレスさん登場。
事もあろうに、そばに近寄り跪く。
あかん、あかん、そんな対応したら、ドツボにはまるよと思っていたら、案の定、デイサービスのヘルパーさん状態で、その老人は益々悦に入って、ボルテージは上がって行く。
歩行器の高齢者となると、致し方なしであるし、他のお客さんに迷惑かかることを恐れての、
謝罪対応ではあるが、かえって異常事態に陥る。
人権が取りざたされる昨今、下手な対応をすれば、ニュース沙汰。
しかし、この姿を見れば、どちらが過剰かは明らかである。
私も足の不自由な高齢者だが、金銭管理ができて、一人で外食できるのは、一応自立である。
しかし、こんな風に公共の場所で、問題が起こるのは、健全な状態ではない。
これからの時代、長寿国の世の中で、山ほど起こる出来事である。
以前、美容院のスタッフに、介護の講習を依頼されて、認知症対応や身体介護を教えたことがある。
大半が、高齢者のお客様なので、美容技術だけでは間違いが起こるので、知識を学びたいとの意向であった。
本当にその通りで、見極めができないと、今回のような事になる。
大変な時代になってきたなと、ため息が出る。