第十話「その言葉を撤回して下さい」

昔の諺に、

「三人寄れば文殊の知恵」

「三本の矢」

一人よりは三人で考えたり、

三人で力を合わせたらいいじゃんと、

いうような意味で有る、

 

現代では、今時では、

政治も、ビジネスも、宗教も、

「皆んなで助け合い」

「みんなで力を合わせて」なんてこと、

人間関係論が崩壊している日本では、

この諺は、「通用しない」

 

もはや、同じ古い諺でも、

「塞翁が馬」

「湖の馬」

という、言葉の方が、

なるほどと、納得する時代でもある。

 

「湖の馬」は、

馬を湖に連れていっても、

馬が水を飲みたくなければ飲まない、

「塞翁が馬」は、

幸だと思ってると不幸に変わったり、

不幸だと思ってると、幸に転じることがある。

 

ほんと、そのとおりで、

他人が、説得しようが、

本人が自ら決定しなければ、

無理やり進めると、ハラスメントになる。

 

たまに、

「いつの時代の話やねん」とか、

古びた「正義、誠実、努力」を、

間違った解釈で、振り回す人達が、

今も、横行している。

 

日本の古いしきたりが残る地域、

高齢者が蔓延る村や町、

は、まだまだ、遅れているが、

ほとんどの若者達が、

自由に言動し、行動できるようになった。

 

私も含めて、

教える立場の人間は、

「私の考え」を、押し付けてはいけない。

親も、教師も、上司も、

素晴らしい若者達の大切なものを、

プチプチと、潰してゆく。

 

言いたがり、

教えたがり、

偉そうなおっさんが、

一人の若者に対して、

ダラダラと、

世の中や社会の仕組みを、

押し付けていた。

 

若者は、

賛成するで無く、反対するで無く、

対応していたら、

その態度が、気に入らなかったのか、

とうとう、いってはいけないことを、

「言った!」

 

お前、ツンボか!

聞いてんのか!

お前、アホか!

しずかに、耐えていた若者が、

「その言葉を、撤回してください!」

顔を上げて、毅然と上司に、

伝えたので有る。

澄んだ瞳に、涙が、光っていた事を、

忘れはしない。