母の生き様

夜、滅多にない事に母からの電話が鳴った。嫌な予感。第一声「とうとう来たわ!」「何が?」突然歩けなくなったという。そうなった経緯を詳しく話し、とりあえず報告しときます。と、気丈な母は様子を見るから来なくていいと、全て自分で決めて自分で判断する人であった。
私が15歳の時に、母は我が家に嫁いで来た。
今から思えば思春期の子供が4人も居るところによく嫁いで来たと思う。父はどんな口説き方をしたのか、死ぬまで聞けず。今で言うバリバリのキャリアウーマンだったので、私達子供とは、お互い我慢し合いながら今日までいい距離感では来たと思う。ロングの白衣にピンヒールを履いて颯爽と歩いていた姿を思い出す。県立病院の内科医であった。
父を看取って、一人暮らしになってからも、「一人でできる間は頑張るわ」と言ってきたが、もはや92歳となるとそうはいかない。「検査データを見て、自分の状態を把握しときたいの」と、最近はあちこちの病院通いが続いていた。どの医者にも「歳ですからね」と言われ、私も医者だった頃はあんな風に冷たく患者を診ていたのねと反省しきり。
お母さん、もう頑張らなくていいよ。なさぬ仲の私達を育ててくれた感謝とお礼をそろそろさせてもらえませんか?