断捨離

「いらないものは、捨てといてね」
と言うのは、
「あなたが死んだら、私が片付けなあかんからね。」
と言ってるようで、93歳の母に、やいやい言うのは、憚られる。
しかし、どう見ても、この大きな家の収納庫には、不必要なものが多すぎる。
年代物の貴重品があれば良いが、質素倹約の父の理念もあり、どう見ても、お宝鑑定団に出すものはない。
未だ、数年前に亡くなった父の書斎はそのままにされて、今にも使用できるように、ペンなどが机の上に並べられている。
どの引き出しを開けても、ゴミひとつなく整理されているのを見ると、まだそこに父が存在している気がする。
「もう!なんで、こんなゴミだらけ?」
と言いながら、捨てていける状態の方が、まだ
ましである。
整然と、まとめられたものを見ると、なんだかいらない物なのに、大切なものにも見えて来て、さわれない。
見るに見かねて、私と姉が、ゴミ袋片手に、
父の衣類や、ビビ割れるまで置いていた皮のカバンなどを、ごっそり捨てた。
「いいんやね、これ捨てるよ!」
と、責任転嫁しながら、処分する。
案の定、後で、二人が、捨ててしまったからバージョンにはなるのだろう。
親子といえど、女は嫁に行き、名字も変わり、
それぞれの人生を歩む。
だから、父と母の歩んだ歴史を知らない。
少し、かけた古びたお湯のみ、時代遅れの博多人形、私達からすれば、捨てるに等しい物ではあるが、母が生きてる間は、残しておこう。
いずれ、私にも来る現実に対処するため、
「いらないものは、今捨てる!」
を、実行しているのである。
それが、残された人への配慮かも知れない。