優しい秋が応援してる

扉を開けたら、爽やかな風が、頬を伝った。
朝駆けにも関わらず、火傷しそうな車のシートが、ひんやりとしている。
エアコンではなく、窓を全開にして、走り出すと、目の前に真っ青な空が広がっている。
人間とは、勝手なもので、猛暑の中では、
なんだか、イライラと癪に触った出来事すら、
遠い日の出来事の様に感じて、落ち着いている。
攻撃的な思考を、まろやかな感情が、とんがった神経を、静かに溶かして行く。
あまりに変わり果てた日本が、やっと戻って来た様に感じて、出会う人達に、
「おはよう、涼しくなりましたね」と、思わず、笑顔もでるようになった。
人の命も、家も、電気も、水も、失った人達も、猛暑、脱水症、泥水の地獄の中で、倒れることすら許されなかった今年の夏。
真っ黒に日焼けした肩に、少し温かなカーディガンを羽織り、ひとときの落ち着いた時間が、
取り戻せたら、自分のことのように嬉しい。
自然は、一つ間違えば、脅威となるが、
人間に、計り知れないほどの癒しともなる。
そんな目にあっても、こんな目にあっても、
住み慣れた土地を愛して、人々は、離れようとはしない。
そして、誰もが、その大自然の恩恵と優しさを
知っている。
平和な日常が、被災された人たちに戻ることを、年老いた私にできる応援は、
遠くから、祈る事しかできないでいる。