ついてない人

人生の中で、何をやっても上手くいかない人がいる。
確かに、その人と出かけると、止まっているのに車とぶつかりそうになったり、目指す目的の店が休みだったり、お金儲けな話が一瞬でパーになったりと、ややこしいことに遭遇する。
本人も子供の頃から、ろくなことのない人生だったと薄々気が付いているので、
「やっぱりね!」
発言は、傷つくので私は言わない。
人柄は、真面目で素直で一生懸命生きていると自他共に認めているのに、なぜか、空から火の粉や葉っぱや鳥のフンが落ちてきて、隣にいる私にはかすりはするが、まともにその人に落ちて来る。
「先生!今回は良かったんです!うまくいきそうです。」
と、報告を受けると、わたしは祈るような気持ちになる。
生まれ落ちた時のポジションが悪かったのか、理解ある親に恵まれず、好きな大学に行けず、親の会社を継げば、借金だらけで責任だけ取らされ、それが原因で家族は逃げ出し、一人になった途端に大病を患うなどなど、一人の人生とは思えないほどの悲劇のドラマである。
慰めようもなく、
「貴方のせいではなく、家系の因縁かも」
とは、わたしは決して言わない。
「知識を学び、人間を見極める力をつけて、
焦らず冷静に判断せよ」
と、なるべく、厳しく助言してきたのである。
この人にとっては、最後に来てこんな先生と出会ったことも、ひょっとしたらこれも悲劇?
それでも、諦めることもせず、ずるいこともせず、何度も何度も挑戦して、再生して行く姿に感動する。
苦労が身についた人は強く、まともな人格が出来上がっていく。
ヘナヘナの私から見れば、この人の方が、先生だったかも知れない。