ジーンズ先生と呼ばれて

最初の講義に、ブルージーンズで出かけた。
介護の世界では、ご法度である。
硬いジーンズの生地で、高齢者の皮膚を痛めたり、傷つけることを恐れての配慮である。
否定するつもりはない。
介護の世界は、人の日常生活の中の世界であることを、知って欲しかったからである。
医者や看護のように、治療だけが目的ではない。
あらゆる場面で、介護は発生する。
道端で動けなくなっている高齢者。
無銭飲食をする金銭感覚を失った高齢者。
隣の席で、立てなくなった高齢者。
いつでも、どこでも、介護が必要になる。
そんな場面に遭遇した時、
誰が助ける?
今、すぐに!
たとえ、友人の結婚式に向かう途中の着物姿であっても、助けねばならないのが介護である。
ジーンズがあかん、ピアスがあかん、とは言ってられない状況である。
どんなファッションであれ、助けれる技術を身につけねばならない。
「介護を学んだ貴方達は、雑踏の中で倒れている人を起こし、無事に医者や家族の手に渡すまでが役目です。」
と、教えてきた。
24時間、365日、普通の暮らしの中で、学んだ介護で困った人を介助してあげて欲しい。
「介護の資格はそのために、活用してね」
と、私は生徒たちに講義し続けてきたのである。