車椅子の世界観

梅雨を飛び越えて、夏が来た。

「車椅子で、散歩しましょう!」
こもり気味の私に、声をかけてくれたので、
思い切って、外に飛び出した。

進行速度は、自転車よりは遅いけど、当たる日差しも風も、みんなと変わらず味わえる。

いつもより、目線が違う風景に、
「へぇー、ほぉー!」
見慣れた街並みに、新しい発見がある楽しい車椅子散歩。

立って歩いている人の半分の高さしかない、
車椅子の世界観。

だから、背が低い子供達とは、よく目が合うのである。
「こんにちわー」
恥ずかしそうに、小さな声が聞こえてくる。
子供達の純粋な優しさに、ホッとする。

芦屋という素敵な街なのに、障害者には過酷なガタガタ道。
車輪では上がれないほどの、段差の連続。
たどり着けない目的地に悪戦苦闘。

「税金はどこに使われてるのかなー?」
と、良からぬことを考えていたら、
大好きな「パンタイム🍞」に到着。

お気に入りの栗の蒸しパンとアイスコーヒーを買って、店の小さな中庭で、一休み。
足が不自由になっても、みんなと同じ幸せを味わえる。

そして、車椅子を押して連れてきてくれた人が、吹き出す汗を拭いている。
誰かの優しさで、生きていることを実感する。

いつの間にか、
「チュンチュクチュン」
と、すずめたちが、パンくずをやる私の周りに
集まって来た。

久しぶりに、ケラケラと笑う私がそこにいる。